2021.05.06

「65歳までの再雇用」と「65歳からの再雇用」~70歳まで《就業確保》努力義務~

定年65歳以上70歳まで《就業確保》努力義務

令和3年4月、国家公務員の定年年齢60歳を65歳まで引き上げる案が国会に提出され、注目を浴びています。これで2回目、一度廃案になり、あらためて提出されたものです。

内容は、65歳まで一気に変更するのではなく、令和5年~令和13年度にかけて、段階的に65歳まで引き上げていくもののようです。また、60歳以降、給与は7割、60歳で役職定年なども盛り込まれています。

一般企業でも、令和3年4月1日から、定年を引き上げる等の対応をして、70歳までの就業確保をめざしてください、という努力義務があらたにスタートしました。現在、定年は60歳以上、プラス65歳までの「雇用確保」という義務規定があり、その規定はそのまま、今回の努力義務が追加されました。

努力義務とは言え、じわじわと、日本は65歳以上定年、70歳まで働くのは当たり前、になりつつあるのだなと感じます。

努力義務の内容

この努力義務の話題が出てから、施行前にも関わらず、何か対策をと社内で検討に入ったという話はよく伺います。もちろん、この法改正の前から、会社独自の決断で、徐々に定年年齢引き上げや廃止に向けて、段階的に措置を行ってきた企業もあります。

今回の法改正で新設された努力義務は、簡単にいうと「65歳までの雇用確保の義務に追加して、下記①〜⑤いずれかの中から措置を選び、さらに70歳までなんとか《就業機会》を確保してあげるよう努力してくださいね」というものです。

① 70歳まで:定年引き上げ
② 定年制:廃止
③ 70歳まで:「継続雇用」制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものもOK
④ 70歳まで:継続的に「業務委託契約」を締結する制度の導入
⑤ 70歳まで:継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

実は、先程《就業機会》と書きました。65~70歳までの新しい規定については「就業」という言葉を使い「雇用」と言っていない点が今までと違う大きなポイントとなります。

現行:60歳~65歳まで《雇用確保》義務

新設:65歳〜70歳まで《就業確保》努力義務

「就業」とは、会社に雇われることだけではなく、個人事業主として業務委託で働くことも含まれます。今回の法改正の場合、④⑤がそれにあたります。この2つは「創業支援措置」とも呼ばれ、その名のとおり、自社では直接雇用しないけれども、自立してご自身で事業を行うことを支援しますよ、というものです。

「創業支援措置」を実施する場合は、計画を作成し、労使で十分な話し合いの上合意を取るなど、ハードルは高いのですが、多様な働き方も認められるべきという時流に合わせ、かつ企業に対しても最大限配慮されたものなのではないかと思います。ただ、どの企業でも容易に実現できるものではなく、否定的な意見もありますが、いろいろな意味で、大きな一歩、大きな改正とも言えます。

就業規則「60歳~65歳までの再雇用」と「65歳~70歳までの再雇用」制度は分けて規定

さて、法律改正に対応するには、もれなく就業規則の変更も必須となります。

現在、60歳以下の定年は法律で禁止され、65歳までの《雇用確保》が義務化されています。現在、その方法として一番多く拝見する会社の規定は「60歳~65歳までの再雇用」制度ではないかと思います。今回の努力義務の新設を受け、今までと同様、再雇用制度を検討する場合、「単に、現行の65歳までの再雇用制度を、70歳まで延長すればいいの?」というご質問をいただきます。その場合、会社の規定はどうしたらよいのでしょうか。

ポイント1:65歳~70歳まではあくまで「努力義務」

現在のところ、努力義務ですので、65歳以降は、再雇用制度の対象とする労働者について、企業側が限定することができます。必ず全員を対象にしなくてはならない、というわけではないのです。全員70歳まで再雇用対象にするのは、企業にとっても負担やリスクもあるため、まずは対象者を限定しつつ、穏やかに進めていくのも良いかもしれません。

ポイント2:「60歳~65歳までの再雇用」と「65歳~70歳までの再雇用」制度は分けて規定

この場合、現行の制度と、あらたに新設する努力義務の対象となる制度とは、別々に就業規則で定めておく方法が有効です。

例:—————————————————————
(65歳以降の再雇用対象者)
第〇条 この規程における対象者は、65歳到達時において次の号に定める基準をすべて満たし、65歳以降再雇用を希望するものとする。ただし、担当業務の縮小またはこれに準ずる諸事情がある場合は、65歳以降再雇用をしないことがある。

  1. 営業職、〇〇職の業務に従事した経験が定年後再雇用も通算して10年以上ある場合
  2. 定年後再雇用時の職務評価が平均して4以上の場合
  3. 定年後再雇用時に懲戒処分を受けていないこと
  4. 直近の健康診断で業務に支障がないと認められた場合
    ————————————————————–

ポイント3:その他限定事項も検討可能

他にも、業務を営業職と〇〇職に限定したり、1回の契約期間も半年に短くしたりと、各会社の事情に合わせ、企業も最大限努力しつつ定めることも可能です。もちろん、全員対象をめざした努力は労使ともども続けていただきたいものですが、その最終形に向けたロードマップを徐々に歩んでいく方法も有効です。

最後に・・

会社によっては、40代くらいまでの方で構成され、定年年齢に到達する社員が当分いないので、関係ないよ、と思われている場合も多くあります。ただ、もし、中途採用で50代の優秀な経験者の方を突然採用するとなった場合、会社の定年年齢や65歳以降の就業確保措置について等、会社の方針について質問されることもあるかもしれません。

実際、取り組みはまだであっても、まずは法改正について内容を確認し、会社の方向性だけでも決めておくことは有意義かもしれません。また、努力義務というと、じゃあ何もしなくていいよね、となる経営者の方は多いのですが、あまりこの改正に反したような措置を行っていたりすると、行政指導の対象になりますので、注意しておきたいところです。努力義務とはいえ法律には変わりありません。

また、一方で、高齢者の方々の自助努力も大切な要素になると、個人的な意見ではありますが強く思っています。労働者も、会社に頼るばかりでなく、40代、50代前半くらいの早い段階から、定年後のご自身の就業について具体的に考えておくことはとても重要です。国からの支援、企業努力、自助努力、全てが相まってはじめてよい結果が生まれるのではないかと思います。

今回の努力義務の新設に伴い、令和3年度は「65歳超雇用推進助成金」も注目されています。諸要件ありますが、就業規則の整備やコンサルティングにかかった費用を助成してくれるもので、大きな助けになるかと思います。

関連記事

  • 2022.03.14

    法改正

    令和4年4月から年金制度「6つ」の改定について

  • 2021.11.30

    お知らせ法改正イベント・セミナー

    12月は「職場のハラスメント撲滅月間」です

  • 2021.06.26

    お知らせ法改正

    フリーランスのフードデリバリー・IT人材、労災適用へ

おすすめ記事

  • 2023.05.06

    お知らせ法改正

    キャリアアップ助成金~令和5年4月1日から一部廃止・変更~

  • 2023.05.06

    お知らせ

    英語版ひな形(育児介護休業規程・職場におけるハラスメントの防…

  • 2022.01.01

    法改正

    未払い賃金が請求できる期間等が変更になっています(消滅時効2…

新着記事

  • 2022.03.14

    法改正

    令和4年4月から年金制度「6つ」の改定について

  • 2022.02.08

    法改正イベント・セミナー

    東京労働局によるオンライン説明会『「改正育児・介護休業法」-…

  • 2022.01.30

    法改正

    キャリアアップ助成金~令和3年12月22日から正社員化コース…